二峰性分布を持つテクトニック微動の構造的制約

Seismological Structures on Bimodal Distribution of Deep Tectonic Tremor

目次

要約

  1. マルチバンドレシーバ関数を用いた詳細なプレート境界構造の可視化
    遠地地震および近地深発地震の波形から計算したマルチバンドレシーバ関数により,紀伊半島におけるプレート境界構造を高精度で描き出すことができた.これにより,これまで不明瞭だったプレート境界の深部構造が明らかになった

  2. 高周波イメージングによるプレート境界の深さ依存性の明瞭化
    高周波成分を含むレシーバ関数イメージングにより,プレート境界の構造が深さによって大きく変化していることを示した.特に,浅部ではプレート境界に対応する明瞭な負の速度境界である一方,深部ではその構造が不明瞭になる傾向が見られた

  3. 上盤の透水性の違いがテクトニック微動の二峰性分布を反映
    テクトニック微動が継続時間の違いによって二峰的な分布を示す原因として,上盤の透水性の違いが考えられる.浅部では,透水性の低い下部地殻直下で流体が閉じ込められやすく,スロースリップイベントと同期的な微動活動が発生する.深部では,上盤のマントルウェッジの透水性が高く,流体が断続的に供給され,継続的な微動活動が発生しやすくなる

本研究成果は,2021年3月31日に,Geophysical Research Letters誌にて掲載されました

  • Sawaki, Y., Y. Ito, K. Ohta, T. Shibutani, and T. Iwata, (2021). Seismological structures on bimodal distribution of deep tectonic tremor. Geophysical Research Letters, 48, e2020GL092183. doi: 10.1029/2020GL092183 (Open Access)

背景

 南海トラフ沈み込み帯では,深部スロー地震地震(低周波地震・テクトニック微動)がプレート境界で発生する.紀伊半島北東部では,微動分布がプレート沈み込み方向に「二峰性(bimodal)」を示し,浅部にスロースリップイベントと同期的な微動活動(Episodic Tremor; ET),深部に断続的な微動(Continual Tremor; CT)が発生する(Obara et al., 2010)

 微動活動には流体の関与が強く指摘されているが,この二峰性分布の原因となる地震学的構造はこれまで明確にされていなかった.そこで,高解像度のレシーバ関数イメージングを行うことで,紀伊半島北東部における深部微動の二峰性分布を引き起こすプレート境界構造を明らかにし,スロー地震発生の物理的メカニズムを解明することを試みた

References